岡崎市議会議員の小田たかゆきです。
クリスマスも終わり、いよいよ
年末年始がやってきますね。
28日が仕事納めである人も、
30日がそうである方もいらっしゃると
思いますが、残りあと僅かですね。
さて、前回のエントリーでは12月定例会を終え、
議案等の賛否についてだけ記し、
報告だけに留まっていましたので、
今回はそこについて書きます。
議員提出議案1件、第101号議案外27件、
請願7号外9件の審議が行われ、
会派として以下のように
賛否を表決しましたので、
ご報告致します。
□議員提出議案
議員提出議案12号「地方議会議員の厚生年金への
加入を求める意見書の提出について」
には反対
この中でも会派でいろいろと意見が割れたのが、
「地方議会議員の厚生年金への加入を求める意見書」に
ついてでした。
これは現在、国民年金にしか加入していない地方議会議員の
厚生年金への加入を求める意見書なのですが、
まずは、その全文をご覧ください。
地方議会議員の厚生年金への加入を求める意見書の提出について地方創生が、我が国の将来にとって重要な政治課題となり、その実現に向け大きな責任を有する地方議会の果たすべき役割は、ますます重要となっている。このような状況の中、地方議会議員は、これまで以上に地方行政の広範かつ専門的な諸課題について住民の意向を酌み取り、的確に執行機関の監視や政策提言等を行うことが求められている。また、地方議会議員は、議会活動のほかちいきにおける住民ニーズの把握等さまざまな議員活動を行っており、近年においては、都市部を中心に専業化が進んでいる状況にある。その専業議員には、現在一部の議員を除いては、国民年金しか将来保障の手だてがなく、そのことが地方議会議員のなり手不足の一因とも考えられる。よって、国民の幅広い層からの政治参加や地方議会における人材確保の観点から、地方議会議員の厚生年金加入のための法整備を早急に実現するよう強く要望する。一方で、地方議会議員の中には、既に年金受給資格を有する者も数多く活動している。年金受給資格を有しながら新たに議員になった者においては、厚生年金への加入を選択できる制度にすることを要望する。以上、地方自治第99条の基底により意見書を提出する。
これによると、地方分権化の時代において、地方議会議員の役割の
高度化、多義化が要求されるなかで、年金制度の充実が
担い手不足の解消に 一役買うので、地方議員の厚生年金への
加入を要望するという内容となっています。
確かに、これからの議員に求められる資質は多種多様なものに
なると考えられますし、さまざまなバックグラウンドを持つ人、
考え方を持つ人が議員になること、挑戦することができる
環境が望ましいのは論をまたないと思います。
私もそれは賛成です。
しかし、です。
上記のような担い手が生まれてくる環境整備を
担保するのが「厚生年金」への加入だという
因果関係がいまいち納得できないのも確かです。
もちろん、将来の安定が保障された身分だからこそ
安心して挑戦できるという部分も否定できないことは
ありません。ましてや、子育て世代の30代、40代が
議員に挑戦するには「矜持」だけではいかんともしがたく、
将来の保証がいくばくかそれを後押しする面があることも
十分に考えられます。
ただ、私たちが考えなければならないことは、
「議員」という存在はどうあるべきか、
そこではないでしょうか。
この問題にはこのような本質的なことが隠されていると思います。
一般に厚生年金に加入されている方は、
会社や団体と労働契約を結び、仕事の成果に対する対価として
「賃金」を得ている人です。
時間給であれ、能力給であれ、会社が定める基準に見合った
働きをしたことに対する対価が支払われているはずです。
そこにはノルマがあり、上司による仕事の評価があり、
売り上げがあり、毎年、毎月、毎日、数字で判断される
という側面があります。
一方、議員というのは「特別公務員」という位置づけであり、
税金から「報酬」を頂いている身分です。
労働契約を結んでいるわけでもなく、ましてや、
一定の物差しによる基準で対価が支払われているわけでは
ありません。毎月ごとの「ノルマ」もなければ、
上司による「評価」も存在しません。
極端なことを言えば、議会において一般質問をする
義務もなければ、委員会で発言をしなければならない
義務もないわけです。
だからこそ、「出勤」もなければ、「労働時間」という概念も
議員には存在しないはずです。
これはいい悪いではなく、その立場のヒトが
なにを求められているのかではないでしょうか。
賃金労働者は課、部、会社の利益の向上を目指し、
各々の利益の追及が社会の福祉に貢献するという市場原理の
世界で動いています。全体最適のために、
労働契約などで個人の自由は制約されるかもしれませんが、
それは市場におけるルールがそうさせます。
議員は、ヒトに縛られることなく、法による支配の下で
「自由に発言」することが求められている存在です。
これはなにも、誰からも自由であるというわけではなく、
さまざまな方からの声、思い、状況を斟酌し、最後に
何を発言するか、その裁量において「自由」であるということですが、
それを担保するには、外部からの評価から極力外側に
位置していることが必要です。そうだからこそ、
これだけめまぐるしく変わる世の中において、
4年に1度なる長期の視点で審判が
下るようになっているわけです。
ながながと書いてきましたが、
私は議員の「厚生年金」への加入は、議員の
自由な発言を阻害する
ことに繋がるのではないかと懸念しています。
こう書くと語弊を招くかもしれませんが、議員の「サラリーマン化」に
繋がるのではないかと思うのです。
何度も書きますが、サラリーマンがいいとか悪いとか、
議員がいいとか悪いとかを論じているわけではありません。
それぞれの持ち場を守っていくことが大切です。
ただ、「厚生年金」加入は
議員に求められている職責を阻害するのではと懸念しているのです。
議会と行政における二者関係が緊張感を持つことこそ
地方行政の活性化において本質的な問題であり、
それをいかに担保するかが
制度設計において最も大切な視点です。
その関係の維持のために、さまざまなバックグラウンドを
持つ人や考え方を持つ人が地方議会に参入してくることが
必要なことです。
しかし、今回の意見書にあるような重要なテーマを
安易に持ち出してくることは、賛否以前の問題として
自分たちの立ち位置を「行政」からサラリーを貰っている存在
と見立てているのではないかと訝しむに値するのではないでしょうか。
だからこそ、賛成しかねたわけです。
みなさんの意見をお伺いできればと思います。
では、また。